転職活動中の20~30代を対象に実施したアンケートでは、約半数の人が「何らかのハラスメント被害経験がある・または目撃したことがある」と回答しました。ハラスメント被害に遭わないためにすべきことは?また、企業側の対策は?エージェントとして多くの人事・採用担当者と接しているリクルーティングアドバイザー・渡邊さんに、昨今の採用傾向や、入社前に企業のハラスメント体質を見抜く方法などを聞きました。

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リクルーティングアドバイザーってどんな仕事?

転職エージェントの事業内容といえば「求職者の方の転職を支援する」キャリアアドバイザー(CA)のイメージが強いのではないでしょうか。でも「企業の採用を支援する」リクルーティングアドバイザー(RA)の役割も同時に担っているのです。

RAの主な業務は企業側とのリレーション構築。採用を検討している企業の担当者にヒアリングを実施することからスタートします。事業内容や業界動向、募集ポジションの業務について、採用したい人材のターゲット像や求めるスキル、さらには社風や企業の特徴、直近で入社した方の属性まで、あらゆる角度からお聞きし、採用活動に必要な情報を集めます。

また、求職者様に対してそれぞれの企業に応じた面接対策を実施するのも、企業情報を熟知しているRAの仕事。職務経歴書の誤字脱字チェックもお手伝いしており、企業側の営業担当とはいえ、求職者の方と接する機会も少なくありません。

CAとRAが密に連携をとる転職支援のスタイルは、中規模エージェントならではのもの。二人三脚だからこそ、内容の濃いサポートができていると自負しています。

人事の関心トレンドは「社内制度、副業、ハラスメント防止」

ハラスメント防止対策は職場環境を健全に保つために必要なものですが、同時に離職を防ぐ施策でもあります。

昨年ごろから人事の関心事は「社内制度、副業、ハラスメント防止」の3つになっています。許可制で副業を解禁する企業も少しづつ出てきていますし、最近は男性の育休取得にも注目が集まっています。

産育休制度の活用は、特に女性を積極採用したい企業にとって必要不可欠な要素。無形商材の営業職やカスタマーサクセス、クリエイティビティを必要とするポジションで女性の活躍に期待する企業が増えていることも、社内制度構築意識の高まりに影響していると考えられます。

キャリア形成段階にある年代の女性は、結婚や出産などの大きなライフイベントを控えている方もおり、産育休制度の活用実績について質問を受けることが多いです。女性の働き方が変わったと言われて久しいですが、採用する側としてはライフイベントをどうしても意識してしまうのもまた現実。

とはいえ、面接で「結婚の予定は?」などという質問をするのは言語道断。業務とは直接関係のないプライベートな要素で判断するのではなく、長く働き続けられるような社内制度を整えるほうが得策です。働き方改革法案が4月より完全施行されることもあり、この傾向はさらに強くなるのではないでしょうか。

ハラスメント対策で、離職を防止する

今年6月からは「ハラスメント防止法案」が順次施行されます。

ハラスメント防止対策は職場環境を健全に保つために必要なものですが、同時に離職を防ぐ施策でもあります。

オンボーディングの導入などで、中途採用社員の活躍早期化と定着率の向上を図る企業が増えています。また、マネジメントを現場任せにせず、問題が生じた場合に人事や管理部門が介入できる体制にシフトしているケースも。

例えば、営業部が花形部署で絶大な発言力を有していて、管理部門が一切意見できない状態になっているような企業は、健全とは言えません。職場での人間関係で生じた問題を、直属の上司以外に相談できる仕組みを整えることは、安心して働きたい社員にとっても、健全な職場環境を整えたい企業側にとっても、有効な施策です。

私たちRAはあらかじめ、紹介先企業にハラスメント問題がないかなどのチェックを行っています。もちろん、企業と人とのマッチングは相性に左右される部分も大きいので「こんな企業はNG」などと決めつけはできませんが『高年収・高ポジション・年間休日150日で福利厚生もバッチリ!』など、いくら条件のよい求人だったとしても、社風に問題がある企業とは取引しません。

「ハラスメント体質企業」の見分け方

多くの企業を見る仕事柄「危ない職場」は感覚的にわかるようになってきました。求職者の方が選考時に企業のハラスメント体質を見抜く方法も、いくつかありますのでご紹介します。

基本的なことですが、社員の方の態度が横柄だったり、オフィスが散らかっていたりする企業は社風も乱れている場合が多いので要注意です。経営陣がやたらと根性論や精神論を語る、アットホームな社風や仲の良さをアピールする、社歴の浅い若手の重要ポジション登用が異常に早いといった企業も、慎重に検討したほうがよいかもしれません。

また、面接では以下について確認することをおすすめします。

  • エントランスや社員の雰囲気
  • 直近入社3年以内の社員定着率
  • 女性管理職比率
  • 産育休の取得、復職事例

産育休を取得した社員が復職した事例が多数あり、女性が多数活躍している企業は環境が良く、働きやすい会社かどうかを見極めるひとつの指標となります。男性も「自分には無関係」と考えずに、確認することをおすすめします。また、採用担当者だけでなく、配属予定部署の上司や社員と実際に話す機会を持てればさらに安心です。他の方とも直接話してみたい旨を採用担当者にお願いするのは、特に失礼にはあたりません。ぜひリクエストしてみてください。

転職エージェントが紹介する求人については、社風や体質に懸念のある企業の案件はまず存在しません。それでも求人票の条件だけにとらわれず、自身の目で確かめるのがベストです。

「パワハラ被害に遭って退職」面接で伝えるべき?

ハラスメント被害に遭ったことが直接の退職理由になった場合「面接で正直に話すと心象が悪くなるのでは?」と心配される方もいらっしゃいます。でも、ハラスメント被害経験が直接マイナス評価につながることはまずありませんのでご安心ください。

ただ『日常的に灰皿が飛んでくる職場だった』といった極端な例は別として、何を持ってハラスメントとするのかは、受取側の主観によるところも大きく、線引きは難しいのが実状です。よって、面接の際にハラスメント被害経験をアピールすることはせず、質問を受けた場合は正直に答えるというスタンスがいいでしょう。その際は他の退職理由もあげつつ「ハラスメント行為が退職のきっかけのひとつになった」という表現ができればよいと思います。

もちろん、エージェントのアドバイザーには諸事情をあらかじめ伝えても大丈夫です。お聞きした情報をそのまま応募先企業に伝えるわけではないので、ご安心ください。

聞きたいけど、聞けない!面接のジレンマを解消する方法

ハラスメント被害を未然に防ぎ、ミスマッチ転職を回避するためにも、エージェントなど第三者が介入する転職方法は有効です。

「御社ではハラスメント行為はありますか?」と質問してハイと答える面接官はまずいませんし、そもそも給与や残業、働き方についても、直接は聞きにくいものですから。

私たちRAは数字目標のある営業職です。でも「数字を追う」だけでなく「責任も負う」べきだと思うのです。人生の中で仕事の占めるウェイトはとても大きい。だからこそ、転職が決まったら終わり、ではなく、求職者様、企業側双方に対して入社後のフォローも行っています。

現実的には100%満足のいく転職は難しいと思います。よくて70%。あとの30%は入社後に自身で埋めて、100%にする。そう捉えてみると、転職の選択肢が広がるような気がしませんか。何か困ったこと、相談したいことがあれば、入社後でもエージェントをどんどん頼っていただきたいです。

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