日本でも女性が男性と同じように働くことができる環境が整いつつありますが、実際にはまだまだ改善点もあります。

今回は日本における「女性の社会進出」の歴史と、これからの課題や未来について考えていきましょう。

決めつけられていた女性の役割

その昔、女性は家庭に入るものという考えが広く人々に浸透しており、働くことはおろか、教育すら満足に受けられませんでした。

第二次世界大戦前にも女子高等学校という女性が教育を受ける場はありましたが、男子よりも格下と見なされ、カリキュラムも『良妻賢母を育てる』といった内容でした。

大きなきっかけとなったのは、第二次世界大戦後です。

敗戦した日本はアメリカによる法整備が進み、男子を家長とする従来の「家制度」は崩壊、男女平等の民主主義国家へと転換していきました。

教育面でも新制中学の義務化により従来の約2倍の女子が中等教育を受けることとなり、さらには男女共学が認められ、女子の就学率は著しく向上していき、教育を終えて企業に就職する女性が増えていきます。

社会の中で女性の位置付けは大きく変わっていきました。

参考:コトバンク(女子教育)

男女が平等に活躍できる場を

1985年に成立した男女雇用機会均等法は、女性の社会進出の大きなきっかけです。

この法律は、募集や採用時に男女を均等に考えること、昇進や、定年・退職・解雇などについて女性であることを理由に男性と差別することを禁止するものです。

かつては結婚や出産を理由に退職を迫られる(もしくはそのような空気が社内にある)ということも少なくなかったようですが、男女雇用機会均等の制定により、徐々に企業側の意識も改革されていきました。

さらに2015年には女性活躍推進法が施行。この法律は、

国・地方公共団体、301人以上の大企業は、

(1)自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析

(2)その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表

(3)自社の女性の活躍に関する情報の公表(300人以下の中小企業は努力義務)

を行わなければならないというもの。2019年6月には、この一部が改正(301人以上⇨101人以上へ)されるなど、アクティブな動きを見せています。

参考:厚生労働省(女性活躍推進法特集ページ)

また、ライフイベントにより女性の社会での活躍は大きく左右されていましたが、直近でこの部分にアプローチする法律改正の動きもありました。

2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月、2022年10月、2023年4月の3回に分けて段階的に施行されます。

施行のタイミング内容
2022年4月1日〜・育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠
・出産の申出をした労働者に対する個別の周知、意向確認の措置の義務付け
・有期雇用労働者の育児 ・介護休業取得の要件の緩和
2022年10月1日〜・育児休業の分割取得 ・ 出生時育児休業(産後パパ育休)の新設
2023年4月1日〜・育児休業の取得の状況の公表の義務付け

さらに、国が積極的にこのような働きをする中、各企業も女性の雇用に積極的に取り組んでいます。

独自に女性向けの特別休暇を制定したり、産休や育休の取得をしやすくしたり、また復帰後にも活躍できる環境をきちんと用意するよう取り組んだりと、様々です。

出産した場合に補助金が支給されるという企業も出てきています。

こうして女性が結婚・出産を経験しても引き続き活躍できる環境は、少しずつ整い始めているように見えます。しかし世界的に見ると、日本はジェンダー平等に大きく遅れをとっています。

SDGsにおける目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

SDGsとは、SustainableDevelopmentGoalsの頭文字を合わせた言葉で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されます。

SDGsは2015年9月、ニューヨーク国際本部で開かれた国際サミットにて、150を超える加盟国首脳の全会一致で採択されました。

2016年から2030年の15年間で達成する目標を記しており、17の目標と169のターゲットから構成されています。

「地球上の誰一人取り残さない」を掲げ、地球の保護・あらゆる貧困の解消・すべての人が平和と豊かさを得られる社会を目指すSDGs。

象徴的でカラフルなアイコンは、みなさんもメディアなどで一度は見たことがあるのではないでしょうか。

そのSDGsには女性に関する項目もあり、目標5にて「ジェンダー平等を実現しよう」として設定されています。

正式な和訳は「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」です。

SDGsのもとに全ての人が健康で平等に権利を得る社会を目指す一方で、女性であるが故にそのチャンスを得られない人が世界中にたくさんいるのです。児童婚(18歳未満での結婚)や女性の人身売買や身体拘束、そして

  • 非正規雇用の割合の高さ
  • 企業の役員、管理職の割合の低さ
  • 政治家の少なさ

などが問題視されています。

特にこの3点を含む「女性の社会進出」は、日本における大きな課題になっています。

経済・教育・政治・保健の4分野、合計14の項目から各国の男女の不均衡を数値化する「ジェンダー・ギャップ指数」の2022年版でも、日本は146ヶ国中116位という結果に終わっており、その不平等さは世界各国の中で相対的に見ても厳しい結果となりました。

中でも、政治と経済の数値が特に思わしくなく、各項目で低い数値が目立ちました。

まとめ:本当の意味での『女性の社会進出』

多くの人たちの働きかけによって、女性の活躍は後押しされてきました。

しかし、こうした動きの中でも、

  • ルールが形骸化しており、実際には機能していない
  • 働きたい女性が働けない、非正規雇用の割合が多い
  • 管理職以上の女性の割合(7.5%)は、国際的に見ても特に低い水準

など、女性の社会進出については未だ多くの課題が残されています。

女性の活躍というと、結婚・出産ありきで考えられがちですが、その根底には戦前から続く家長制の意識がまだ根強く残っています。

さらにその延長として、家事などの「アンペイドワーク(無償労働)」も女性のものという考え方もいまだに強く、例えば共働き夫婦でも、妻は仕事をしながら夫の6倍近い時間の家事をこなしているというデータもあります。

女性の生き方・働き方は多様化しています。

女性が自立して幸せを掴むことも、夢ではありません。

もちろん容易なことばかりではありませんが、私たち一人一人が声を上げアクションを起こしていくことで、SDGsに掲げられているゴールを目指すことも可能なのです。

自立して幸せに生きるために、まずは柔軟な働き方をできる環境が必要です。

幸せな人生は、他でもない自分が実現していくという意志を持って、ぜひ、働くこと・生きることに向き合ってみましょう。