有給休暇は「有休」や「有給」などと呼ばれていますが、正式には「年次有給休暇給休暇」(ねんじ ゆうきゅう きゅうか)という名前です。
今回はこの年次有給休暇が、どういうものなのかをご紹介します。
【ビジネス用語】有給休暇とは?有給休暇の義務化とは?
年次有給休暇は、労働者に対して賃金が発生する休暇。
つまり、休日でありながら賃金が発生する日のことを指します。
効率的で創造的な仕事を生み出すには、きちんとリフレッシュ出来て、ストレスを解消できる環境が必要だという観点から、日本でも近年休暇取得の促進が図られています。
また、有給休暇には、労働者の心身の休息以外としての機能も期待されています。
その機能とは、職場全体のレベルアップです。
職場の誰かが有休を取得した場合、その仕事を他のメンバーで引き継ぎ・分担することが必要となりますが、その場合以下のような効果があるだろうと考えられているのです。
- 担当外の従業員が業務に着手⇨客観的に普段の業務の効率チェックができる
- 普段自分がやらない仕事をする⇨従業員のスキルアップ(多能化)に繋がる
- 交代するポジションの人が、その仕事をこなせるのかチェックする機会になる
- 交代するポジションの人への権限委譲のきっかけになり、従業員成長のチャンス
- 有給休暇の活用で、余暇を使って資格取得などキャリアアップを促進
従業員のリフレッシュや新たな成長の機会の創造、それによる企業の発展が見込めるなど、好循環を生み出すことが期待されている年次有給休暇制度ですが、実際のところ日本の取得率はまだまだ低いというのが最近までの現状でした。
そこで、政府は「年次有給休暇の取得促進」として、2015年に労働基準法の改正案を提出。
2019年4月から全ての企業で、年に5日の有給休暇を取得することが義務付けられました。
つまり、業種業界関係なく、年10日以上の有給休暇が与えられている社員の全てが、必ずそれを年に5日は消化しなくてはならないのです。
仮に有給休暇の買取をしている企業であっても、5日は必ず取得させる必要があります。
万が一違反すると、雇用者側は懲役6ヶ月以下・30万円の罰金というペナルティを負うことになります。
上記の場合、物理的な痛手はもちろんのこと、「罰せられた企業」としてイメージダウンにもなってしまいます。
世間でどう見られるか・立ち位置なども変わってきますし、何より「働きたい」と思う求職者を確保するのにも一苦労です。
そうなる前に従業員に自ら有給休暇を取得してもらうか、雇用者側が取得日を決め従業員に有給休暇を取得するよう依頼したりと、色々な工夫がなされています。
【ビジネス用語】有給休暇を取得できる条件とは
年次有給休暇は、雇い入れから6ヶ月継続勤務・そのうち出勤日に対して8割以上稼働している場合に付与されます。
入社して半年以上、きちんと出社していれば付与されるものなのでそこまで心配ありません。
反対に、入社半年未満で、本来出勤日である日を休みたい時は「欠勤」扱いとなってしまうので注意が必要です。
風邪などの場合はやむを得ませんが、冠婚葬祭などの時はそれに応じた「慶長休暇」を福利厚生として用意してくれている企業もあります。
入社後まもなく予定がある場合は、早めに直属の上司や人事担当者に相談しておきましょう。
さて、有給休暇は正社員・契約社員はもちろん、パートタイマーや派遣社員にも付与されるものです。
勤続年数や労働時間によって取得できる日数は異なります。
以下の表は、週40時間以上(いわゆるフルタイム)で働く人の有給休暇取得可能日数です。
有給休暇はある一定のラインまで蓄積できるものです。
つまり、入社半年後には10日間、入社1年半後にはそこにプラス11日間の年次有給休暇が付与されます。
入社後一年半の間、一度も有給休暇を使っていなければ、合計で21日間の有給休暇を保有していることになります。
ただし、有給休暇を使うことができる期間は付与されてから2年以内と限定されています。
消化しなかった有給休暇は繰り越しすることができるのですが、取得日から2年を過ぎた有給休暇は消滅しますので、注意が必要です。
また、最大で一度に保有できる有給休暇の日数は40日間と決められています。
繰り越しと2年以内、この2点を把握して計画的に有給休暇を使いましょう。
また、有給休暇を取得する時は、できるだけ事前に申し出ましょう。
突然の体調不良など止むを得ない場合は仕方ありませんが、レジャーなどスケジュールがあらかじめわかっている場合は、可能な限り早い段階で伝えておきましょう。
有給休暇の取得に関しては、書面の提出も必要な場合があります。
自社の就業規則を確認し、社内ルールに従いましょう。
自分の有給休暇日数が残り何日かというところも正確に把握しておく必要がありますので、メモを取っておいたり、不安な場合は人事担当者に確認します。
まだ有給休暇が残っていると思い込んでいたら日数が足りない。
そんな時は前述の「欠勤」扱いになってしまいます。
欠勤は有給休暇と異なり、賃金が発生しません。
欠勤が多いと、給与や評価の査定に響く可能性が高くなります。
自分の有給休暇をきちんと把握しておきましょう。
【ビジネス用語】年次有給休暇を正確に把握し、計画的に活用!
- 年次有給休暇の付与には勤続年数や出勤の割合などの条件を満たすことが必要
- 年次有給休暇は付与から2年以内なら繰り越し可能・一度に保有できるのは40日間まで
- 2019年4月から年に最低5日の年次有給休暇を取得することが義務化
- 年次有給休暇を取得するときは仕事の進み具合や引き継ぎなど、周囲にも配慮を
最後になりますが、有給休暇の略称は「有休」「有給」、どちらが正しいのでしょうか。
これは諸説ありますが、結論、どちらでも良いようです。
ただ、混乱を防ぐために最近は「有給休暇」という表現が多く使われます。
口頭で「ゆうきゅう」という場合、どちらとも取れるので良いですが、文面で表記する時は「有給休暇」と表記するのが間違いないですね。
皆さんも有給休暇をうまく使い、リフレッシュや自己研鑽に役立てていきましょう。
有給休暇ハンドブック厚生労働省